2013年11月22日金曜日

P吸着薬使用での生命予後

Kidney International (2013) 84, 998–1008

Use of phosphate-binding agents is associated with a lower risk of mortality


COSMOS stdy、ヨーロッパでの6797人の透析患者においてP吸着薬(PBA:phosphate binding agent)使用群と非使用群に分けての、多施設、前向きコホート試験。

14.9%PBAなし、85.1%PBA使用に分けられた。使われた薬剤はCa含有剤、セベラマー、炭酸ランタン、Al含有剤、その他の薬剤であり、単剤、または併用で使用された。


PBA投与群の方が有意に、BMI高値、男多い、タバコ多いDM少ない、CVD既往少ない、透析年数長い、透析時間も長い、VitD・シナカルセト・ESA使用多い。PPTHAlb高い。(赤字はriskと考えられている因子)。


PBA使用群で、補正なしでPBA群でmortality risk 53%CVD risk 42%低下。補正後もそれぞれ29%22%低下した。


べースラインから1度でもPBA投与された群はmortalityのHR 0.56CVD mortalityのHR 0.59と生命予後いい。また途中PBAを中止した人・初めから使っていた人を除くとmortality のHR 0.63CVD mortalityの有意差ないという結果。VitD使用患者を除くとmortality HR 0.73CVD mortlityの有意差なし。

薬処方率が10%上がると、mortality 8%、CVD mortality 7%下がるという結果。


PBAの中でも、Al製剤単独・またはCa剤との併用、またCa剤とその他の分類薬の併用は有意差でないが、他のPBAではmortalityが有意に低い
単剤ではランタン、併用ではランタン+セベラマーが予後がいい。

栄養状態を補正してもriskが低下しているのがポイント。
他国・多施設でたっており、不均一さ・交絡が出ている可能性。
Pの値のfollow不明。


2013年11月18日月曜日

保存期CKDの血清P値と死亡率・ESKDの関係

Kidney International (2013) 84, 989–997

No independent association of serum phosphorus with risk for death or progression to end-stage renal disease in a large screen for chronic kidney disease

KEEP(kidney early evaluation program)data、10672人の比較的早期が多いCKD患者前向きコホートで、平均追跡期間は2.3年。血清PmortalityESRDriskの検討を血清P3.3<3.3-3.73,7-4.14.1<4群に分け行った。

まず、最もPが高い群は若年、女性、ヒスパニック系の黒人ではなく、健康保険に加入していない人が多かった。しかしCKDに罹患していることは自分でわかっている人たち。Cr高値・eGFRも低く、Alb尿も多かった。喫煙者・脂質異常症、CVDに既に罹患している人が多い。BMIは低い、血糖低い、Hbも低かった。
また補正してもP高い群の方がCVDの既往が多かった。

結果はPと死亡率の関係は補正しても、また連続変数にしても認められなかった。

未補正ではP高値群がESRDに陥りやすいという結果になった(統計学的有意)。しかし補正後は有意差見られず、連続変数でも同様の結果であった。全死or腎不全という複合outcomeについても同様で有意差見られなかった。

筆者の意見として低riskのCKD患者においては、血清Pはmortality・腎死に関係ない、もしくはmarkerとして機能しない可能性がある。

問題点として主なものは
 ・最初の1度のみP測定(しかしこれは他のstudyでもそう)
 ・PCVDの既往の関係は交絡因子
 ・2.1年から2.3年は短い(他のstudy3つよりは長い、2つよりは短い)
FGF23や尿中Pは計測できていない
・加療についての内容なし



2013年11月16日土曜日

保存期CKDのCKD-MBDについて

Ther Apher Dial, Vol. 15, Supplement 1, 2011

Guideline–Practice Gap in the Management of Predialysis
Chronic Kidney Disease Mineral Bone Disorder in Japan

KDOQIKDIGOのガイドラインに照らし合わせ、日本のCKD-MBDの加療内容を見る。日本のCKD患者のVitDの値、VitD製剤使用の少ないことに起因する因子調べる。

日本において行われた多施設研究、CKD stage3-5の日本人773人が対象、横断研究。

・KDOQIKDIGOでのガイドラインに照らし合わせた際に使用されるVitD製剤の割合と比較し、実際の日本での使用状況はCKD 48%CKD 515%と非常に少ない。炭酸カルシウムも少ない。
・尿蛋白、女性、DMhigh PTHlow VitD状態risk。
・日本ではPTHのコントロールもよくない(CKD stageが進むにつれさらに)。これはlowVitD状態が多い、またVitD製剤を処方していないことに起因する。しかし低たんぱく食のため、CKD stage3,520%は低Pであり、CaPのコントロールはいい。

○筆者の意見
・VitDが低い、またVitD製剤が使用されていない理由について
 ・VitD添加食品が日本にはない(欧米にはある)
 ・日本人CKD患者はアメリカ人CKD患者より尿蛋白が多い
 ・native VitD製剤使えないため

・ポドサイトの障害は糸球体とボーマン嚢の癒着を生じ、尿細管障害へ。生じた尿蛋白は酸化ストレスで近位尿細管障害へ。近位尿細管は1-αhydroxylaseの産生部位であり、その障害により同酵素の産生低下が生じる。酸化ストレス自体もそれに影響。尿細管障害、高FGF23血症VitD活性障害、そしてその産物も低下する。

VitDUpの低下作用、また腎保護作用がある可能性も指摘されており、PTHの低下作用のためだけではなく、他の保護作用も期待して使うべき。






8月から塩酸セベラマーも保存期CKDに使用できるようになり、CKD-MBDの治療の幅が広くなりました。VitD製剤には尿蛋白低下作用、また腎保護作用も示唆されており、積極的に使用するべきだと現時点では考えられます。

2013年11月14日木曜日

塩酸セベラマーとCa含有吸着剤の比較試験

Kidney International (2007) 72, 1130–1137
Effects of sevelamer and calcium-based phosphate binders on mortality in hemodialysis patients

アメリカ透析患者を1053例セベラマー(平均 6.9g)1050Ca含有剤(平均酢酸Ca 5.3g、炭酸Ca 4.9g)1068例比較対象にわけOS、CVD・infection・otherの死亡率を調べたopem-label randomaized trial




結果は、2年以内にOSに有意差なし。しかし2年以降続けた例(43%)ではセベラマー群の方が有意にmortality低下。また65歳以上の高齢者では継続年数に関係なく、有意にセベラマー群のmortality低下
筆者の意見では高齢者は若年者と比較してCa負荷が強く、そのためshort termでも有意差が出たと考えられる。
CVDinfection、その他死は有意差見られなかった。

有意差の記載ないが、セベラマー群で入院回数少ない・入院日数も少なかった。


問題点としては脱落者、しかも早期が多い(46%、両者の数・時間的有意差なし)Bias存在の可能性がある。
セベラマー群ではVitD使う傾向が強いことは以前に示されている。VitDの生存率に関する影響は示されていないが、これが交絡している可能性はある。


○今のところ炭酸ランタンが骨に沈着することは分かっているが、症状が出ているという報告はないようです(7年間)。昔のAl脳症のように後から副作用が出る可能性は否定できないのでそれを考えながら使うしかありません。。

2013年11月12日火曜日

初めに

初めまして。医者3年目・腎臓内科後期レジデントを某病院でしております。
lifelogを何かの形で残す、また医学的な事柄をoutputをする場を得るためにブログを始めました。
読んだ論文、印象に残った医学的事柄を記したいと思います。